shop blog RSS
冬と春のあいだに、高野山
高野山へ向かう朝は、まだ冬の気配が残っていました。 吐く息は白くて、けれど光はどこかやわらかい。季節がゆっくり動いているのが分かります。 今回も法要のための訪問。 何かを整える時間になるんだろうな、とぼんやり思いながら車を走らせていました。 山へ入ると、空気が変わります。 音が少なくなって、街の延長とは違う静けさがある。 ここに来ると、余計なものが自然と削がれていくような感覚になります。 家族でこうして集まるのも久しぶりでした。 普段はそれぞれの生活があって、時間はあっという間に過ぎていく。 でもこういうタイミングでは、ちゃんと同じ場所に戻ってくるのが不思議です。 整えられた空間の中で、静かに手を合わせる。 特別なことをしているわけじゃないのに、気持ちが少しずつ落ち着いていきます。 磨かれた床や、均された砂利、きれいに揃えられた木々。 どれも長い時間の積み重ねでできていると思うと、自然と姿勢も整う気がします。 ふと周りを見ると、欧米から来ている観光客の姿が多い印象でした。 写真を撮るだけじゃなくて、その場の空気にしばらく身を置いているような人が多い。 消費するための旅というより、文化に触れるための時間。 そういう過ごし方は、やっぱりいいなと思います。 冬と春のあいだ。 冷たい風の中に、少しだけあたたかさが混じるこの季節が好きです。 はっきり変わるわけじゃないけど、気づいたら移ろっている。 この日は、少し軽めのジャケットにローファーくらいがちょうどよかった。 頑張りすぎないくらいの服が、こういう場所にはよく合う気がします。 何かを足すというより、整える。 それだけで十分なんじゃないかと思える時間でした。 帰り道、山を下りながらそんなことを考えていました。
静かな贅沢に触れた日
先日、とあるご縁で客船を見学させていただく機会がありました。 港に停泊している姿を遠くから眺めるだけでも十分に非日常ですが、一歩中に足を踏み入れた瞬間、その感覚は一段階どころか二段階ほど跳ね上がります。 今回見学させていただいたのは、ラグジュアリークルーズとして知られるセブンシーズ・エクスプローラーです。 リージェント・セブンシーズ・クルーズが運航する、いわゆる世界最高峰クラスの客船のひとつで、“世界で最も豪華な客船のひとつ”とも称されています。 全室スイート・バルコニー付きという設計に加え、食事やアルコール、寄港地観光まで含まれるオールインクルーシブ。 乗船すれば、「財布を気にしない時間」が自然と成立するつくりになっています。 また、乗客数に対して乗組員の数も多く、空間だけでなく体験そのものにしっかりと手がかけられている印象でした。 空間の取り方がとにかく贅沢で、どこを切り取っても“余白”があります。 詰め込まれていないというだけで、これほどまでに心が落ち着くのかと、少し驚かされました。 船全体にゆとりが行き渡っているように感じるのは、こうした設計の積み重ねによるものだと思います。 内装は派手すぎず、それでいて確実に上質です。 主張しすぎないのに印象に残る感じは、どこか仕立ての良いジャケットに似ています。 着る人を選ばず、それでいて着た人を確実に引き立てるような、あのバランス感覚です。 大理石や美術品がさりげなく配置されているのも、この“やりすぎていない贅沢さ”に一役買っているように感じました。 空間そのものに“品の良さ”が宿っているようでした。 船内を歩いていると、ふと「ここでは何を着るのが正解なのだろう」と考える瞬間があります。 きっと正解はないのだと思いますが、不思議とラフすぎる格好ではもったいない気がしてきます。かといって、気合いを入れすぎるのも違う。 この“ちょうどいい塩梅”を探る感覚は、日常の延長にあるようでいて、少しだけ背筋が伸びる時間でもあります。 昼間は軽やかな装いでデッキに出て、風を感じながら過ごす。 夜になれば、ほんの少しだけドレスアップしてレストランへ向かう。 船内には複数のダイニングがあり、有名シェフが監修するレストランもあると聞くと、その“少しだけ整える理由”にも納得がいきます。 そんなふうに、一日の中で自然とスタイルを切り替えていく流れは、ファッションを楽しむうえでも非常に贅沢な環境だと感じました。 また印象的だったのが、乗客の方々の空気感です。 いわゆる“きらびやか”というよりは、落ち着きと余裕を感じる方が多く、どこか自然体です。 それでいて、所作や立ち居振る舞いには品があり、場の雰囲気そのものを静かに整えているように見受けられました。 誰かが主張するわけではないのに、全体として心地よい空気が流れている——そんな印象を受けました。 この船は、世界中の人が同じ時間を共有する“動く空間”のような存在ですが、その空気はどこか上流の社交文化の延長線にあるようにも感じられます。 実際、モナコでデビューし、シャルレーヌ公妃によって命名されていると聞くと、その背景にも自然と頷けます。 派手さというより、“無理のない上質さ”。 その空気ごと体験させるあたりが、この船のいちばんの魅力なのかもしれません。 ここで過ごす時間は、何か特別なことを“する”というより、 ただ丁寧に時間を使うことそのものに価値があるように感じます。 スケジュールに追われるでもなく、誰かに合わせるでもなく、 自分のペースで、景色と空間と少しの装いを楽しむ。 その積み重ねが、結果として「豊かな時間」になっていく。 そんな設計が、この船にはあるように思えました。 街での装いが「周囲との関係性」の中で成り立つものだとすれば、この場所での装いはもっと「自分の気分」に寄っている気がします。 誰に見せるでもなく、自分がどう過ごしたいかで服を選ぶ——そのシンプルな行為が、妙にしっくりきます。 せっかくなので、船内の写真もいくつか。言葉で説明するより、この空気感はきっと伝わるはずです いわゆる非日常ではありますが、どこか落ち着いていて、無理をしなくても自然と背筋が伸びる。 それでいて、「こういう時間の使い方もあるのだな」と思わせてくれるような、静かな余白のある場所でした。 もし「少しだけ日常のスピードを緩めたい」と感じている方がいらっしゃれば、こういう選択肢もひとつあるのかもしれません。 私自身が乗船できるのは、まだまだ先になりそうですが……(笑)
カルチャーって、なんだっけ
実家で、昔の雑誌が出てきました。 「シューフィル」という、靴業界向けのマガジンです。 おそらく、もう廃刊なのかなと思います。 でも、何気なくめくっていたら、普通に面白くて。 写真は少し古いですし、 レイアウトも今っぽくはありません。 それでも、ちゃんと読めるというか、 不思議と引っかかるものがありました。 情報というより、 誰かの「これがいい」という感覚が、 そのまま載っているような感じです。 今は、何でもすぐに調べられる時代です。 靴でも服でも、背景や知識は簡単に手に入ります。 それはとても便利ですし、 決して悪いことではないと思います。 ただ、少しだけ、 物足りなさを感じることもあります。 うまく言葉にはできませんが、 昔のこういう雑誌のほうが、後に残る気がします。 すぐに理解できないものや、 少し遠回りしないと分からないもの。 そういうもののほうが、 結果的に自分の中に残っていくのかもしれません。 たまたま見つけた古い雑誌をめくりながら、 そんなことを感じた週末でした。
解体からはじまる Starts with deconstruction.
シャツを一枚、静かに解体しています。 縫い目に沿って糸をほどいていくと、これまで見えていなかった輪郭が、ゆっくりと浮かび上がってきます。 襟の角度やカフスの幅、身頃の取り方。 何気なく着ていた一着の中に、いくつもの「選択」が重なっていたことに気づかされます。 It’s already designed. ですが、まだ途中です。 いまは、次の企画に向けた小さな試行錯誤の時間です。 本業に追われる日々のなかで、手を動かせる時間はほんのわずかですが、その分だけ一針一針にしっかりと向き合えています。 急がず、無理に進めず。 このくらいのスピードが、いまの自分たちにはちょうどいいと感じています。 うまくいかないことも少なくありません。 思い描いていたバランスと違ったり、やり直したくなる瞬間もあります。 それでも、そういう時間を経たものの方が、きっと長く残ると思っています。 解体された布が、また新しい形を持ちはじめる、その手前。 まだ名前のつかない、この曖昧な時間も大切にしています。 派手な進捗はありませんが、確実に一歩ずつです。 Worn-in, not worn-out. 着古されたものの中にある美しさを、もう一度自分たちの手で確かめながら、次へとつなげていきます。
2025年を振り返って、そしてこれから
2025年6月から、気づけばずいぶん時間が空いてしまいました。 久しぶりのブログ更新になります。 まずは、更新や新しい商品のアップを楽しみにしてくださっていた皆さま、なかなか動けず申し訳ありませんでした。 副業とはいえ、小さな活動ではありますが、自分なりに大切に続けているからこそ、期待してもらっていたこと、その気持ちにきちんと応えられなかったことは、正直なところずっと心のどこかに引っかかっていました。 振り返ってみると、2025年は僕自身にとって、かなり濃度の高い一年でした。 本業の都合で名古屋から大阪へ引っ越すことになり、仕事面でも大きな転機があり、環境も生活リズムもガラッと変わりました。 毎日残業続きで、家に帰るころにはヘトヘト。気づけば一日が終わっている、そんな日も少なくありませんでした。 本業は、Rivergate Brothersの活動と直接つながる仕事ではありません。 それでも、今やっていることや、日々出会う人、経験していることが、あとあと振り返ったときに、必ずいろいろな形でこの活動につながってくると、信じています。 だからこそ、本業にも中途半端な気持ちでは向き合えず、妥協せずに取り組んできました。 忙しさの中でも、ただ時間が過ぎていくだけではなく、少しずつ積み上がっている感覚があったのは、その姿勢があったからかもしれません。 今振り返ると、しんどさも含めて、無駄な時間ではなかったなと思います。 大阪に戻ってから、もうすぐ半年。 最近になってようやく、仕事もプライベートも少し落ち着いてきたかな?という感覚が出てきました。 気持ちに余白ができて、ようやく周りを見る余裕が戻ってきた、そんなタイミングです。 大阪では万博もあり、楽しい出来事はもちろんですが、それ以上に、さまざまな人と出会い、いろんな価値観や考え方に触れることができました。 また旅先などでも、何気ない会話や風景からヒントをもらうことも多く、今後のものづくりに繋がりそうなインスピレーションをたくさん受け取れた気がしています。 Rivergate Brothersの活動については、しばらくの間、大人しくInstagramでの投稿が中心になっていました。 正直なところ、表に見える動きは少なかったと思いますが、完全に止まっていたわけではなく、次のアイテムに向けて、少しずつ水面下では動いていました。 パーカーやスウェットを望まれるお声も多くいただいていて、本当にありがたく思っています。 タイミングや状況が合えば、ぜひ形にしたいと考えていますし、実はそれとは別に、違った切り口のアイテムも準備中です。 詳細はもう少し先になりますが、楽しみにしていただけたら嬉しいです。 相変わらずマイペースな活動にはなりますが、無理をして止まってしまうよりも、細くても長く、きちんと続けていくことを大切にしていきたいと思っています。 これからもRivergate Brothersを、温かく見守っていただけましたら幸いです🙇