冬と春のあいだに、高野山

冬と春のあいだに、高野山

高野山へ向かう朝は、まだ冬の気配が残っていました。

吐く息は白くて、けれど光はどこかやわらかい。季節がゆっくり動いているのが分かります。

 

今回も法要のための訪問。

何かを整える時間になるんだろうな、とぼんやり思いながら車を走らせていました。


山へ入ると、空気が変わります。

音が少なくなって、街の延長とは違う静けさがある。

ここに来ると、余計なものが自然と削がれていくような感覚になります。


家族でこうして集まるのも久しぶりでした。

普段はそれぞれの生活があって、時間はあっという間に過ぎていく。

でもこういうタイミングでは、ちゃんと同じ場所に戻ってくるのが不思議です。

整えられた空間の中で、静かに手を合わせる。

特別なことをしているわけじゃないのに、気持ちが少しずつ落ち着いていきます。

磨かれた床や、均された砂利、きれいに揃えられた木々。

どれも長い時間の積み重ねでできていると思うと、自然と姿勢も整う気がします。


ふと周りを見ると、欧米から来ている観光客の姿が多い印象でした。

写真を撮るだけじゃなくて、その場の空気にしばらく身を置いているような人が多い。

消費するための旅というより、文化に触れるための時間。

そういう過ごし方は、やっぱりいいなと思います。

冬と春のあいだ。

冷たい風の中に、少しだけあたたかさが混じるこの季節が好きです。

はっきり変わるわけじゃないけど、気づいたら移ろっている。


この日は、少し軽めのジャケットにローファーくらいがちょうどよかった。

頑張りすぎないくらいの服が、こういう場所にはよく合う気がします。


何かを足すというより、整える。

それだけで十分なんじゃないかと思える時間でした。


帰り道、山を下りながらそんなことを考えていました。